機械特性の測定について
エンズィンガーはすべての切削加工用素材について機械特性を試験しています。データ値はそれぞれのデータシートに記載されています。これらの情報を利用して素材を比較することができます。
なお、エンズィンガーが提供するデータと他のソースからのデータを比較すると、異なる場合があります。理由として、試験方法、試験速度、試験片の違いが原因と考えられます。エンズィンガーは、切削加工用プラスチック素形材(丸棒、板、チューブ材など)の形状や試験を定めたヨーロッパ標準規格:DIN EN 15860に沿って試験を行っています。エンズィンガーが提供するデータは押出素材から切削加工された試験片を利用して得たものです。押出成形品と射出成型品とでは、結晶化度と繊維の方向が異なるため、値に決定的な差が生じます。(詳細は、以下の引張強度にて説明します。)
引張強度と曲げ強度は、プラスチックをを比較するときに最もよく使用される項目です。高い引張強度を持つエンズィンガーのプラスチック素材例は、次の通りです。
注:炭素繊維やガラス繊維で強化することで、一般的に引張強度と曲げ強度が向上しますが、射出成型品と比較すると効果は限定的です。
押出成形素材の機械強度の特徴
押出成形、射出成形の成形方法の違いにより機械物性に違いが生じてきます。射出成形品よりもエンズィンガーのフィラー無添加の押出成形品のほうが、結晶化度と密度が高い傾向にあります。そのため、射出成形品よりも高強度の物性が得られます。(引張強度、弾性率ともに高くなります。)以下にTECAPEEK naturalを例として示します。
TECAPEEK natural
PEEK樹脂 (ナチュラル品)
物性項目 (左:射出成形品 右:押出成形品)
- 比重: 1.30、1.31
- 引張強度(MPa):100、116
- 引張弾性率(MPa):3600、4200
- 引張伸度(%):25、15
反対に、強化繊維配合の素材同士を比較すると、押出品は繊維が強く配向しないため、射出成形品のほうが引張強度が高い傾向なります。 以下にTECAPEEK CF30 blackを例として示します。
TECAPEEK CF30 black
PEEK樹脂 + 30%炭素繊維強化
物性項目 (左:射出成形品 右:押出成形品)
- 比重: 1.41、1.38
- 引張強度(MPa):240、122
- 引張弾性率(MPa):2300、6800
- 引張伸度(%):1.5、7.0
配向について
- 押出成形品:カットして切削加工して調製した試験片繊維やポリマーの配向はランダムになっている。そのため引張強度は低くなる。
- 射出成形品:試験片樹脂の流動方向に繊維とポリマーが配向し、同じ向きで試験が行われる。強い配向により引張強度が高くなる。