近年、「食の安全」に対する関心が高まっています。各国で定める食品安全規格に適合することが重要です。また、食品製造に使われるプラスチックは繰り返し使用されるため、洗浄・殺菌処理への耐性のある高機能なプラスチックが求められます。アルコールなどによる単純な殺菌処理から医療並みの滅菌処理まで、幅広い洗浄方法により高い安全性が求められます。
プラスチックはその軽量さ、加工性、メンテナンスのしやすさから、食肉や魚肉の加工、乳製品、パン類、菓子製品の工場や機械など、さまざまな用途で使用されています。エンズィンガーのプラスチックであれば生産性と安全性を向上させることが可能です。さらに、金属検出機やX線検出機対応の特殊なプラスチックや、目視で検出可能な青色プラスチックを使用することで、機能性向上とコスト削減も可能となります。
食の安全と樹脂素材への法規制
食の安全を確保する目的で、世界中の国と地域で食品と接する樹脂素材に対する法規制が定められています。以下の規格に準拠しております。また、食品との接触する素材の適正製造基準(GMP)に関するEC 2023/2006など、製品ごとに認証を受けています。
- 食品衛生法(日本)
- FDA (Food and Drug Administration: アメリカ食品医薬品局)(アメリカ)
- EC 1935/2004 およびEU 10/2011(ヨーロッパ)
- GB規格(中国) GB規格コード: GB 4806.1-2016, GB 4806.6-2012 (プラスチック), GB 9685-2016 (添加剤)
食品製造機器等をこれらの国と地域に輸出する際には、輸出先での法規制に適合した材料選定が必要になります。
エンズィンガーはドイツとアメリカに製造拠点を有し、グローバルに切削加工用樹脂素材と射出成形用素材を提供しています。それぞれの国と地域で定める規格に適合した素材を製造・販売しています。
殺菌処理と滅菌処理
食品工場では、微生物の耐熱温度以上に温度を上昇させて微生物を殺菌する「加熱殺菌」と平行して、薬剤等による「冷殺菌」が広く行われています。加熱殺菌処理する場合はプラスチックの耐熱性が問題となります。一般的には「短期耐熱温度」もしくは「荷重撓み温度」を参考として、材料選定してください。
PET樹脂、PC樹脂、PBT樹脂は、オートクレーブ処理により加水分解が進行し、物性が劣化します。ホモポリマーPP樹脂であるTECAPRO MT、ポリアセタール(POM樹脂)、ウルテム(PEI樹脂)、PPSU樹脂、PEEK樹脂は耐加水分解性の高い素材です。薬剤を用いる冷殺菌については、耐薬品性を考慮する必要があります。広く用いられる次亜塩素酸ナトリウム水溶液ですが、耐性に優れる素材はポリエチレン(PE樹脂)やポリプロピレン(PP樹脂)といったオレフィン系の樹脂です。ただし、これらの樹脂は耐熱性が低いので加熱殺菌処理を併用することはできません。併用する場合は、PEEK樹脂、PPSU樹脂が有効です。