品質管理

  • 安心してお客様に使っていただくため、高い品質管理は重要です。原材料の検査から最終製品に至るまで、個々の製造プロセスにおいて厳重な品質管理を行っています。必要に応じて原材料まで遡って追跡することができます。結果として、エンズィンガーではDIN EN ISO 9001およびDIN EN ISO 13485を取得しています。
  • 弊社の品質保証システムは、原材料の購入から切削加工用素材の納品に至るまで、常にモニタリングしています。それにより最高水準の品質を保証し、欠陥やクレームを未然に防いでいます。右の表のように各作業ステップごとにさまざまな検査を実施しています。
  • 国際規格DIN EN ISO 13485は、医療機器の供給と関連サービスの両方に関する規格です。この規格の主な目的は医療機器の品質管理システムの構築です。

    エンズィンガーGmbHの以下の部門でISO 13485を取得しています。

    • 切削加工用押出素材
    • 射出成形
    • プロファイル
    • コンパウンド
    • 切削加工

    弊社のすべての医療素材材(MT素材)は厳重な管理の元で製造されております。エンズィンガーは品質の一貫性を保証しています。

    ISO 13485に基づく弊社の品質管理システムにより、医療素材は課せれる要件を満たし、文書化されています。定期的に生体適合性試験は実施され、また組成変更やその他製造工程に大きな変更があった場合も必ず試験は実施され、その変更履歴は文書化されます。

    証明書

    医療および製薬分野でトレーサビリティーは重要です。個々のプロセスを一貫して漏れなく文書化することにより、エンズィンガーでは製品の完全なトレーサビリティを保証しています。注文ごとに生体適合証明書を発行しています。

  • トレーサビリティは、いかなる時でも素材を追跡できる重要な手段です。エンズィンガーでは、上流へ遡ることができる「アップストリーム・トレーシング」という方法を取り入れています。部品や素材に問題があった場合にその原因や発生箇所を迅速に特定することできます。またこれにより、影響を受ける可能性のある他のお客様に速やかにお知らせすることで、被害の拡大を防ぎます。

品質保証

  • エンズィンガーでは、以下の分野への適合性を取得した素材を提供しています。

    •  食品への直接接触(FDAおよびBfRの基準、1935/2004/EC、10/2011/EC、3A SSI等に準拠)
    •  生体適合性(ISO 10993、USP Class VI等に準拠)
    •  飲料水への接触(KTW、DVWG、WRAS、NSF61等)
    •  難燃性(UL94等)

      および、以下の業界に関する素材認証試験 

    • 石油・ガス業界
    • 航空宇宙業界

    原料メーカーや試験機関との密接な協力関係によって、弊社ではお客様のご要望に応じて上記の証明書を発行しています。

  • 食品業界向けのエンズィンガーの切削加工用素材は、以下の欧州食品規格の要件に従って製造されています。

    • Regulation (EC) No. 1935/2004
    • Regulation (EC) No. 2023/2006
    • Regulation (EU) No. 10/2011

    欧州全体で適用される(EU) No. 10/2011に加え、エンズィンガーの素材は、食品衛生法、FDA(アメリカ食品医薬品局)、ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)が発行する「食品接触材料に関する勧告」といった特定指令にも準拠しています。適合証明書はスタッフが素材リストを確認のうえ個別に発行します。 

  • 食品業界向けのエンズィンガー素材は、FDA認可の原材料を使用しています。

    • FDAの条件に関する詳しい情報

    エンズィンガーでは食品製造向け切削加工用素材に対して、FDA適合証明書を発行しています。適合証明書はスタッフが素材リストを確認のうえ個別に発行します。 

    以下のようなその他の食品規格に準拠した素材も、ご要望に応じてご提供することができます。

    • NSF/ANSI 規格51「食品機器用材料」
    • 20-25 3-A 衛生規格
  • 飲料水は、食品製造ガイドラインの対象範囲外となりますが、現時点では国際的に規格化されていない特別規制に従って管理されています。

    飲料水は材料として、あるいは食品の洗浄、調理過程で使用されるため、エンズィンガーは以下の特定指令に準拠した安全な原材料を使用しています。

    • ドイツ - 飲料水と接触して使用するプラスチック(KTW)
    • 英国 - WRAS(水質規制諮問会議)
    • 米国 - NSF 61(米国衛生財団)

    試験内容はそれぞれ異なるため、個別の試験が必要になります。しかし、飲料水の特定条件の適合性に関して、各基準は類似しています。KTW、WRAS、NSF61の仕様を見ると、冷水(最高23℃)、温水(最高60℃)、熱水(最高85℃)の3つのカテゴリーに分類されます。

    食品接触と同様、飲料水と接触する素材の原材料は、適切なマイグレーション試験に合格しなければなりません。原則として原材料メーカーは、マイグレーション試験を実施しなければならす、またどの地域の規制に基づいて試験を実施するかを決めなければなりません。

  • エンズィンガーでは、医療器具から短期インプラントまでの医療用途向けに、滅菌耐性の異なる生体適合性素材(MT素材)を数多く提供しております。

    医療用素材は以下の生体適合性を満たしております。 

    • ISO 10993
    • USP class VI

    エンズィンガーが証明する生体適合性は切削加工用素材に関してのみ有効です。最終的に部品の製造業者は、完成部品を検査し、認証機関へ申請する必要があります。

    医療分野で使用される原材料はFDAの要件を満たしております。FDA認証はユーザーにリスクアセスメントに関する重要な情報を提供します。 

    エンズィンガーでは認定されたクリーンルーム設備を6つ備えています。これらは半導体や医療向けなどの特殊な素材製造に利用されています。弊社のクリーンル―ムは、3ゾーン・カスケードを適用した最先端設備を備え、DIN EN ISO 14644-1 Class 8およびEU GMP Class Dの規格を満たしています。 

  • エンズィンガーの製品ポートフォリオには、特定の燃焼挙動を示す素材が含まれています。

    UL94の燃焼性試験は原材料に対して行われます。ULまたはUL認定ラボでの燃焼試験に加えて、イエローカードの発行(ULリスティング)はULが直接行っています。そのため、ULリスティング認証を持つ素材と、関連するUL分類の要件を満たすだけの素材(リスティング認証なし)は異なります。エンズィンガーの切削加工用素材は、ULリスティングの原材料を使用しています。そのため、難燃性は原材料メーカーのイエローカードをもって代替証明としています。

    UL94以外にも、以下のような特定産業向けの試験があります。

    • DIN 5510-2は、ドイツの鉄道部品に関する代表的な燃焼性試験規格ですが、これに代わり、2016年末からは並行して既に有効な欧州規格EN 45545(鉄道部品に関する素材および部品の燃焼性要件)が適用されています。
    • FAR 25.853は、航空宇宙用途に関する代表的な燃焼性試験規格です。
      同規格には、純粋な燃焼性試験(垂直燃焼性試験)に加え、放射熱と火炎の影響による煙濃度と毒性の判定試験も含まれます。
  • EN ISO 23936-1:2009およびNORSOK M-710, Edition 3に従った、非常に厳しい要件の石油・ガス分野での用途に対応しています。テストはEN ISO 23936-1およびNORSOK M-710, Ed. 3の両基準を満たすよう、英国のElement Materials Technology Laboratoryで行われております。適合証明書は、エンズィンガーのスタッフが、素材リストを確認のうえ発行します。
    • EN ISO 23936 - 1
    • NORSOK M-710規格, Edition 3

    どちらの規格も、比重、硬度、引張試験などの品質管理試験、高温高圧環境で長時間液体に曝す耐薬品性試験が要求されます。

    酸性薬品への耐性評価において、EN ISO 23936-1とNORSOK M-710には大きな違いはありませんが、圧力、温度、酸性薬品濃度に関する要件において、ISOの方が厳しいです。そのため、EN ISO 23936-1の条件に従って試験を行えば、NORSOK M-710にも従うことになります。 

  • 航空局認可を受けた企業の下請業者に直接適用される法規制は存在しません。そのため、エンズィンガーの切削加工用素材は対象となりません。エンズィンガーは、お客様と協力して適用可能な国内外の一連の規格を利用しています。

    エンズィンガーはお客様からの要求仕様に適合した素材を提供するとともに、航空業界の製品認可や注文処理に関する慣習的な手順やプロセスを熟知しています。航空業界を専門とする弊社の担当部門とコンプライアンス管理部門が、お客様の個別の要件に従って、以下のような欧州主要規格に準拠した切削加工用素材の提供を行っています。

    • 素材データシート(例:WL 5.2206.3)
    • 航空規格(例:LN 9388)

    さらに、エンズィンガーの切削加工用素材は、以下のような一般的な国際規格にも準拠しています。

    • ASTM (米国)
    • Mil Spec (米国軍用規格 - ミルスペック)
    • LP (米国連邦政府スペック)
    • FAR 25.853
    • UL 94 -V0
    • ESA ECSS-Q-70-02
  • 欧州規格EN 10204はさまざまな種類の検査証明書を定義しています。エンズィンガーでは以下の3つの証明書に対応しており、契約または依頼に従ってご注文ごとに発行することが可能です。

    • Certificate 2.1:品質証明書
      エンズィンガーの品質基準を満たした素材であることを証明します。(※検査データは含みません。)

    • Certificate 2.2:テストレポート
      Certificate2.1に加えて検査データを含んでいます。ただし、ロットごとの検査データではなく定期的な社内検査データとなります。(※提供する素材と検査データは必ずしも一致しません。)

    • Certificate 3.1:検査成績書
      ロットごとの検査データを含んだ証明書になります。
      (※提供する素材と検査データは一致します。出荷前に検査するため、ご注文時にCertificate 3.1をご依頼いただく必要があります。出荷後にご依頼いただいても対応することができません。)
  • エンズィンガーの研究所では、素材の特性を評価するためにさまざまな分析機器を取り揃えています。また、弊社は外部の検査機関と連携して、さまざまな検査を行っています。

     

  • 切削加工用素材を提供するエンズィンガーは川下に分類されます。REACH登録対象となるのは、添加剤(コンパウンドなど)や化学薬品や原材料になります。エンズィンガーは原材料メーカーからの情報に依存しています。エンズィンガーのような川下のユーザーには、REACH規制に従ったテストや登録を行う義務はありません。

製品の取扱い

  • 切削加工用プラスチック素材の一般的な保管方法は以下の通りです。

    • 適切な台の上に常に平らに保管し(丸棒やチューブの場合)、素材そのものが持つ重さや温度による変形を避けるため、できるだけ一番大きな面を下にします。
    • 可能であれば、閉鎖された室内で室温(温度23℃、湿度50%)で保管してください。
    • また、切削加工用素材の素材名や製品番号(ロット番号)がはっきりと見え、管理しやすいような保管、取扱い方法が必要です。そうすることによって、製品の明確な識別やトレーサビリティが可能になります。
  • プラスチック素材の保管と取扱いにおいては、避けなければならない要素がいくつかあります。

    • プラスチックの特性は、外界からの影響により変化する可能性があります。そのため、日光(紫外線)、大気中の酸素、湿度(降水、湿度)が素材の特性に持続的な悪影響を与える恐れがあります。
    • 切削加工用プラスチックは、直射日光や長期的な外界からの影響を避ける必要があります。
    • また、プラスチックを低温環境に長期間置くことは避けてください。特に、急激な温度変化は避けなければなりません。
    • 低温環境で保管された製品は、時間をかけてゆっくりと室温に戻してから加工してください。
    • 亀裂や折れの原因となる恐れがあるため、強い衝撃や投下、落下には注意してください。
    • ガンマ線やX線などの高エネルギー放射線は、分子破壊による微細構造の損傷の原因となる恐れがあるため、できるだけ避けてください。
    • 化学攻撃や吸湿の可能性を避けるため、切削加工用プラスチック素材は、あらゆる化学物質や水(液体)からは隔離して保存してください。
    • また、他の可燃物質と一緒に保管しないでください。
  • 外界からの影響に対する保護が特に必要な素材は以下の通りです。

    一般にすべてのバリエーションに保護が必要:

    • TECAPEEK (PEEK)
    • TECATRON (PPS)
    • TECASON P (PPSU)
    • TECASON S (PSU)
    • TECASON E (PES)
    • TECARAN ABS (ABS)

    ブラック以外のバリエーションに保護が必要:

    • TECAFORM AH, AD (POM-C, POM-H)
    • TECAPET (PET)
    • TECAMID 6, 66, 11, 12, 46 (PA 6, 66, 11, 12, 46)
    • TECAST (PA 6 C)
    • TECAFINE (PE, PP)
  • 適切に保管されていれば、プラスチック素材自体が発火する恐れはありません。ただし、他の可燃物質と一緒に保管しないでください。

    プラスチックは有機物質であり可燃性の素材です。プラスチックの燃焼生成物または分解生成物は、毒性作用または腐食作用を有する可能性があります。

  • 素材や保管条件、外界からの影響に大きく左右されるため、最大保管期間を特定することはできません。
  • プラスチックの廃棄物や切りくずは、専門のリサイクル業者によって処理、リサイクルされます。加えて、専門業者が適切な排出規制設備を備えた燃焼発電所に廃棄物を配送して熱処理し、発電することも可能です。これは特に、油分で汚染された切削加工による切りくずなど、プラスチック廃棄物が汚染されている場合に適用されます。

  • エンプラのクリーニングに特に適した方法は以下の通りです。

    • 湿式化学法
      • 複雑な形状の部品にも適している
      • 大部分のプラスチックに適用できる
      • 部品への摩耗作用がない
      • 吸湿性の高い素材(PA)の場合は、公差に注意が必要
      • PC、PSU、PPSUなど応力亀裂を起こしやすい素材(非晶質)には注意が必要
    • 機械的処理
      • 主にプラスチックの粗洗浄に適している(ブラッシング、ワイピングなど)
      • 表面が損傷(引っかきキズ)する恐れがあるため、柔らかいプラスチックには注意が必要
    • CO2スノー - ドライアイス粒子洗浄
      • 被洗浄素材に特に損傷や変化の恐れがないため、非常に適している
      • プロセスはドライかつ摩耗作用がないため、部品への熱伝導が起こらない
      • 柔らかい素材や吸湿性の高い素材(PTFE、PAなど)には理想的
    • プラズマ法
      • 複雑な形状の部品に適している
      • 同時にプラスチック表面に活性化効果を与える
      • 表面への摩耗作用がない
      • 湿度による影響がない
  • クリーニング方法は以下によって異なります。

    • 汚れ(薄膜、微粒子、皮膜、細菌)
    • 部品の形状(バルク材、単一部品、スクーピング、機能表面)
    • 部品の素材(プラスチック)
    • 要件(粗洗浄、洗浄、精密洗浄、超精密洗浄)
  • 食品および医療技術の分野で使用される部品に存在する可能性のある残留汚染に関し、その最大量は特定されていません。清潔度の基準が定義されていないため、個々の生産者が許容可能な汚染量の限度を設定し、定義する必要があります。
    FDAやEUのガイドラインでは、製品に対する物質移行に関する指令や規制が定められていますが、表面の清潔度については定められていません。 

    エンズィンガーの切削加工用素材の特徴

    • 医療用途の切削加工用素材には、生体適合性試験を実施。適合証明書を発行
    • 食品と接触する切削加工用素材には、特定物質の移行挙動に関する検査を実施
    • 加工には食品規制に準拠した切削油を使用
    • エンズィンガーは食品分野のGMP(製造管理および品質管理に関する基準)規制に準拠
  • さまざまな溶接プロセスが利用可能であり、非接触プロセス(加熱素子、超音波、レーザー、赤外線、ガス対流溶接)、または接触プロセス(摩擦、振動溶接)から選択できます。使用方法によって、最適な接合を選択する必要があります。耐熱性プラスチックの加工の場合は、非常に高いエネルギーが必要とされます。使用する溶接方法は、部品の形状、大きさ、素材などによって異なります。プラスチックの加工において一般的に使用される溶接方法は次の通りです。

    • 加熱素子および熱風溶接
    • 超音波溶接
    • 振動/摩擦溶接
    • レーザー溶接
    • 赤外線溶接
    • ガス対流溶接
    • 熱接触溶接
    • 高周波溶接
    • 熱伝導、放射線、対流、摩擦
  • 接着を左右する要因は以下になります。

    • 素材の性質
    • 接着剤の特性
    • 接着剤層の厚み
    • 接着表面(前処理を含む)
    • 接着接合部の3次元形状
    • 使用方法と接合部にかかる負荷応力

    接着強度を高めるには、被接着面のプラスチックの表面活性を高める前処理を施します。前処理方法は以下の通りです。 

    • プラスチックの表面を洗浄したり、脱脂したりする
    • アンカー効果を最大化するため、接着表面をサンドペーパーやサンドブラスト処理により粗化させる
    • 炎、プラズマ、コロナ放電処理により、プラスチックの表面を化学修飾して活性度を高める
    • エッチング処理により接着面を化学的に活性化させる
    • プライマーを使用する

    プラスチックの接着部には、継続的な応力の負荷や、応力集中を避けてください。接着部位に圧縮・引張・せん断の応力負荷は許容できますが、曲げ・引き裂き・剥離の負荷は避けてください。可能な限り設計の段階で、接着部への応力が接着強度の範囲内であるように調整するようにしてください。

  • 接着による化学的結合は、他の接合方法と比較して以下の特徴があります。

    • 接合応力が均等に分布している
    • 素材の損傷がほとんど無い
    • 接合によるソリが発生しない
    • 異なる素材間の接合が可能
    • 同時にシール材としての機能が期待できる
    • 部品点数の削減につなげることができる

切削加工用ガイドライン

  • プラスチック製品(半製品を含む)の機械加工には、木工および金属加工用の市販のハイス鋼(HSS)工具や機械を使用することができます。

    原則的には、アルミニウム加工用のような切込み角の工具が適していますが、くさび角の鋭角なプラスチック加工には特殊工具の使用を推奨しています。

    強化プラスチックの加工は、保持時間が短く、加工時間が長いため、ハイス鋼は使用できません。この場合、鋸刃にタングステンカーバイド、セラミック、またはダイアモンドを用いた工具が最適です。丸のこを使用したプラスチック加工に関しても同様で、タングステンカーバイドの鋸刃が理想的です。

    必ず、鋸刃の完璧に砥がれた工具だけを使用してください。プラスチックは熱伝導性が低いため、放熱を確実にするための措置をとらなければなりません。冷却のための一番良い方法は、切りくずを適切に除去することで放熱することです。

    良好な加工結果を得るには

    • プラスチック加工用に設計された工具を使用
    • 適切な刃形
    • よく砥いだ鋸刃を使用
  • 押出成形では、スクリュー押出機によってシリンダー内で原料樹脂を溶かし、圧縮してから均一な状態にします。シリンダー内に生じる圧力を利用し、適切な金型を使用して、素形材を板、丸棒、チューブ形状にし、冷却装置で調整します。

    押出成形の制約

    • 内部応力(内部歪み)が残る
    • 樹脂・繊維による配向が生じる

    エンズィンガーは、切削加工用に最適化して製造した素形材プラスチックを豊富なラインナップで取り揃えております。

    内部応力

    押出成形による圧力から、せん断運動が生じ、溶けた樹脂の塊を流出します。金型から押し出された素形材は、表面から中心に向かってゆっくりと冷えていきます。プラスチックは熱伝導性が低いため、部分ごとに冷却速度が異なります。表面がすでに固化していても、中心にはまだ液状または溶けたプラスチックが残っています。プラスチックが固化するときには、種類ごとに異なる収縮挙動を示します。冷却段階において、表面の固化した層によってプラスチックの中心部は収縮を阻害されています。

    内部応力による加工への影響

    • 加工によって中心部に内部応力が集中する
    • 切削加工の難易度が高まる
      • 亀裂や欠損を生じやすい

     

    解決策

    • 材料ごとに適したアニール処理で応力を緩和
  • 寸法安定性は、切削加工用プラスチックの製造から最終製品の使用にいたるすべての過程で考慮すべき特性です。さまざまな要因が加工部品の寸法安定性に影響を及ぼします。

    吸湿による影響

    • 吸湿性の低いプラスチックは、一般的に非常に安定した寸法安定性を示す例:TECAFORM AH / AD、TECAPET、TECATRON、TECAPEEK
    • 吸湿性の高いプラスチックは、吸湿に伴い寸法が大きく変化する例:TECAMID、TECAST.吸湿/排湿により材料が膨張または収縮するため、加工前に状態調整を行うことが推奨される

    応力緩和による影響

    • 室温環境での加工では、完成部品の寸法安定性に対する内部応力または「残留」応力の影響は限定的であり、完成部品の寸法は安定している
    • 「残留(内部)」応力は、保管中または使用中に徐々に緩和し、寸法の変化につながる可能性がある
    • 特に重要:高温環境で部品を使用する場合は、応力が一気に緩和され、変形、反り、最悪の場合には使用中の部品にストレスクラックが生じる可能性がある

    加熱による影響

    • 材料の内部まで加熱されるプロセスはすべて注意が必要です。例:アニール処理、切削加工、高温環境での使用、滅菌処理
    • 樹脂の温度がガラス転移点を超えると、微細構造が変化し、再度冷却された後に収縮を生じる
      • 収縮や反りは、非対称の部品形状で特に顕著となる
      • 結晶性熱可塑性プラスチックは、収縮率が高く(最大で約1.0 - 2.5%)、反りを生じやすい
      • 非晶性熱可塑性プラスチックは、収縮率が低く(最大で約0.3 - 0.7%)、結晶性樹脂よりも寸法安定性が高い
    • 多くの場合、金属に比べ熱膨張係数が高いことを十分に考慮する必要がある

    良好な加工結果を得るには

    • 局所的な温度上昇を避けるため、十分に放熱させる
    • 切削量が多い場合には、内部応力の発生を抑えるために中間アニール処理を行うことが好ましい
    • プラスチックは金属よりも大きな寸法公差を必要とする
    • 変形しないように、クランプ締め力を控えめにする
    • 繊維強化プラスチックの場合は特に、半製品の状態での部品の位置に注意する(押出の方向を考慮する)
    • 切削加工をする際は、個々の部品に最適な処理を選択する
  • エンジニアリングプラスチックでは、ドライ切削加工が主流になりつつあります。現在ではこの分野で十分な経験が蓄積され、切削油を使用することなくプラスチックを加工することができるようになってきました。熱可塑性プラスチックの以下の機械加工は例外です。

    • 深い穴あけ
    • ねじ切り
    • 強化プラスチックののこ挽き

    一方で、十分に冷却された刃面を使用すれば、プラスチック部品の表面品質と公差を改良することができます。さらに、送りを増やし、結果的に加工時間を短縮することも可能になります。

    冷却しながら切削する場合

    冷却が必要な場合は、以下の方法が推奨されます。

    • 切りくずを出して冷却
    • 圧縮空気を使用
      • メリット:冷却すると同時に作業エリアから切りくずを取り除くことができる
    • 水溶性切削油の使用
    • 市販のドリル用エマルジョンおよび切削油も使用可能
      • 噴霧と圧縮空気で塗布すると効果的

    非晶性プラスチックの機械加工

    • 切削油の使用を避ける
      • ストレスクラック(応力亀裂)を起こしやすい素材のため
    • どうしても冷却が必要な場合
      • 部品を加工したらすぐに清浄水またはイソプロパノールで切削油を洗い流す
      • 適切な切削油を使用する
    • 清浄水
    • 圧縮空気
    • 専用潤滑剤:適切な切削油に関する詳細は、切削油メーカーにお問合せください。

    ドライ切削のメリット

    • 部品に切削油が残らない
      • 医療機器または食品機械の部品に適している(切削油が移る心配がない)
      • 材料に対する切削油の影響を排除できる(膨張、寸法変化、ストレスクラックなど)
    • 材料と相互作用しない
    • 加工担当者による誤った判断や処理の可能性を排除できる

    注意

    • ドライ切削加工では特に、放熱を確実にするための冷却処理が不可欠です。
  • 寸法要件の厳しい部品はすべて、アニール処理を施した素形材から製造します。そうしないと、機械加工による熱でどうしても残留応力が解放され、部品に反りが生じてしまいます。

    機械加工中に生じた内部応力を緩和するため、エンズィンガーの素形材は原則として常に、製造後に特別のアニール処理を施しています。アニール処理は、特別な熱風循環オーブンを使用して行われますが、一部の製品では窒素雰囲気下の熱風循環オーブンを使用したり、オイル・バスを使用する場合があります。

    アニール処理は、素形材、成形部品、完成部品の過熱処理を伴います。素材ごとに決められた温度まで、ゆっくりと均等に製品の温度を上げていきます。続いて、成形部品内に熱を完全に行き渡らせるため、保持時間をとりますが、この時間は素材とその肉厚によって異なります。その後、ゆっくりと均等に室温まで温度を下げます。

    • 製造または加工工程で生じた残留応力は、アニール処理によって大幅に減少、またはほぼ完全になくすことができます
    • 材料の結晶化度が向上します
    • 材料の機械的特性が最適化されます
    • 材料内に結晶構造を均等に形成します
    • 耐薬品性が向上することがあります
    • 反りや寸法変化を抑えます(加工中および加工後)
    • 寸法安定性の持続可能な向上
  • 中間アニール処理は、重要な部品の機械加工中に行うと効果があります。特に以下のような場合に推奨されます。

    • 精密公差が求められる場合
    • 部品を反りやすい形状(非対称、断面のくびれ、ポケットまたは切込み溝)に仕上げる必要がある場合
    • 繊維強化/充填剤を注入したプラスチックを加工する場合(繊維配向によって反りが強くなる可能性がある)
      • 加工プロセスによって、部品内の残留応力が高まる可能性がある
    • 十分に研磨していない工具または不適切な工具の使用:
      • 不必要な応力発生の原因
    • 部品への過剰な加熱 - 原因は不適切な速度と送り量
    • 切削量が多くなる - 主に片面加工の結果

    中間アニール処理により、このような応力を減少させ、反りの発生を緩和することができます。中間アニール処理をする場合には、次の措置により、必要な寸法と許容誤差を守ることが大切です。

    • アニール処理によって部品が収縮する可能性たあるため、中間アニール処理をする前に、まず「仕上げしろ」を残した部品の寸法合わせ、粗加工を行う
    • その後に最終的な寸法合わせを行う
    • 反り防止のため、中間アニール処理中は部品をしっかり支持する
  • 加熱処理は常に、プラスチックおよびその製造プロセスに直接的な影響を与えます

    • アニール処理
    • 切削加工(摩擦熱)
    • 使用(使用温度、スチーム滅菌)

    結晶性プラスチック

    • アニール処理により材料特性が均等化する結晶化度の向上、機械特性の最適化、寸法安定性の向上、耐薬品性の改善
    • 機械加工では、摩擦熱で加工箇所が過熱しやすく、その結果微細構造の変化や後収縮が生じる可能性がある
    • この点に関し、TECAFORMには特に注意が必要で、不適切な機械加工によって重大な変形や反りが部品に生じる可能性がある

    非晶性プラスチック

    • 後収縮や反りは比較的少ない
  • プラスチックはバンドソー(帯のこ盤)でも、テーブルソー(丸のこ盤)でも切断できます。素形材の形状に応じていずれかを選択します。一般的にプラスチック切断加工の最大の危険は、加工工程で工具によって熱が発生し、加工部品に損傷を与えることです。このため、形状と材料に合った鋸刃を使用することが必須です。

    バンドソー(帯のこ盤)

    • 丸棒およびチューブの切断に最も適している
    • サポートウェッジの使用が推奨される
    • 大歯で、鋭く砥がれた鋸刃を使用する理由
      • 切りくずをしっかり除去するため
      • 鋸刃と材料の高摩擦および過剰な切削熱の滞留を防止するため
      • 鋸刃の引っ掛かりを防止するため

    メリット

    • 鋸による切断加工中に発生する熱を、長い鋸刃を介しスムーズに放熱できる
    • バンドソーは、直線切断、連続切断または不規則切断など多様な使い方ができる
    • 良質な切り口が得られる

    テーブルソー(丸のこ盤)

    • 主に、直線の切り口で板を切断するのに適している
    • 適切なパワードライブを備えたテーブルソーは、厚さ100 mm以下の板を直線切断するのに使用される
    • 鋸刃は超硬合金製が望ましい
    • 十分に大きな送り量と十分なナゲシ角を選択するメリット:
      • 切りくずをきちんと排出できる
      • 鋸刃の引っ掛かりを防止
      • 切断中にプラスチックが過熱しない
      • 良質な切り口が得られる

    良好な加工結果を得るには

    • 適切なクランプ治具を使用:
      • 振動を防止して切り口のびびりなどを防止。切り口の不良のみならず、最悪の場合には破損するおそれがある。
    • 非常に硬度の高い素材および繊維強化素材は、80 -120℃に予熱してから切断する
    • タングステンカーバイドの鋸刃は摩耗しにくく、理想的な表面に仕上がる
  • プラスチックは市販の旋盤で加工できます。ただし理想的な結果を得るには、プラスチック専用工具の使用をお勧めします。

    工具          

    • 刃幅の小さな工具を使用
    • きれいな旋削面を得るには、幅広のバイトを使用する
    • 柔らかい素材にはナイフ形状のバイトを使用する
    • 調整には適切な形状のバイトを使用する
    • 切断には特殊形状のバイトを使用する
    • 周囲を砥いで、表面を研磨しておく

    メリット

    • びびりの少ない最適な表面
    • 切りくずがたまるのを防止できる

    良好な加工結果を得るには

    • 高めの切削速度を選択する
    • 切り込み深さを0.5 mm以上にする
    • 冷却には圧縮空気が好適
    • プラスチックの強度が低いため、ワークレストを使用
      • ワークを安定させる
      • たわみを防止する

    メリット

    • 材料をほどよく冷却できる
    • プレスチックによって出ることのある連続形切りくずを取り除くこれらの切りくずが旋盤の刃の部分に詰まって、一緒に回転するのを防ぐ
  • 穴あけ加工では特に、プラスチックの低い熱伝導性を考慮する必要があります。プラスチック(特に結晶性樹脂)は、穴あけ中に摩擦熱が滞留しやすく、特に穴深さが穴径の2倍以上の場合には短時間に熱がこもることがあります。そうなってしまうと、いわゆる「スミアリング」と呼ばれる現象が生じやすくなり、一部が過熱膨張することで、加工品内部に圧縮応力がかかるおそれがあります(この現象は、特に丸棒の中心部に穴あけ加工するときに見られます)。この圧縮応力により、完成部品に大きな歪みが生じたり、寸法が出なかったり、さらにはクラックや折れ、または破裂にいたる可能性もあります。これらの不具合は、材料に適した加工をすることで避けることができます。

    工具

    • 通常は、鋭く目立てされた市販のハイス鋼(HSS)ドリルを使用
    • ブリッジの狭いドリルを使用(同期化ドリル)
      • 摩擦熱の滞留を防止

    良好な加工結果を得るには

    • 切削油を使用する
    • 切りくずの排出と、追加冷却のため、ドリルを頻繁に出し入れする
    • ドリルが引っ掛かったり、亀裂が生じたりしないよう、手動送りをなるべく避ける

    小径(25 mm未満)の穴を失敗なくあけるには

    • ハイス鋼(HSS)ドリルを使用する
    • 螺旋刃のドリルを使用する
    • ねじれ角12 - 25°
      • 非常になめらかなスパイラル溝
      • 切りくずの排出に有利
    • ドリルを頻繁に出し入れする(間欠ドリル加工)
      • 切りくずの排出を良くし、摩擦熱の滞留を防ぐ
    • 薄物の加工では以下を推奨
      • 高速の切削速度
      • ドリルがワークにとられるのを回避し、ドリルが折れたり、ワークがドリルに引き上げられたりする不具合を防止するため、可能な限り中立的なすくい角(0°)を選択

    大径(25 mm以上)の穴を失敗なくあけるには

    • 径の大きな穴をあけるときは、下穴をあける
    • 下穴の径は25 mm未満にする
    • 下穴に続いてチゼルで仕上げ加工を行う
    • 長尺の丸棒に穴あけをする場合には、片側から穴をあける
      • 両側から穴あけを行ってぶつかると、応力のかかり具合によっては亀裂が生じるおそれがある
    • 強化素材など場合によっては、120℃に予熱(断面10 mmあたり約1時間)してから穴あけするのが望ましい
      • 寸法が狂わないようにするため、ワークが完全に冷えてから仕上げ加工を行う
  • プラスチックは普通のマシニングセンターでフライス加工できます。この場合、刃溝幅が十分に大きな工具を使用すれば、切りくずをきちんと排出でき、摩擦熱の滞留を回避できます。

    工具

    • 熱可塑性プラスチックには以下の工具が適しています。
      • エンドミル
      • 正面フライス
      • 平フライス
      • シングルカッター
      • フライカッター
    • シングルカッター
      • メリット
      • 高い切断性能
      • 高品質の表面と切りくず排除の両立

    良好な加工結果を得るには

    • 回転数を高くし、送りを中程度にする
    • しっかり固定する
      • 正確な固定と合わせて、高速加工と高スピンドル速度で高い表面品質を実現
    • 薄いワークは吸引装置か両面テープでフライス盤に固定
    • 平滑面には、外周フライス加工よりエンドミルの方が経済的
    • 外周フライス加工では、刃数による振動を抑えるため、1~2枚刃の工具を使用し、刃溝幅には余裕を持たせる
  • プレーナーと平フライス削りは、特定形状の刃で切削する方法で、特定の切り口、均等な表面、溝またはプロファイル(形成フライス)を加工するために使用します。
    プレーナー掛けは、プレーナー機を使って表面上をまっすぐ切削します。これに対し平フライス削りは、フライスヘッドを使って表面を円周方向に切削します。どちらの切削方法も、素形材の表面を平坦または均質に加工するのに適しています。最大の違いは、表面の仕上がりが見た目に違うことです(表面構造、光沢)。

     

    エンズィンガーの平削りと平フライス削り

    • エンズィンガーの加工サービスでは、平削りと平フライス削りの両方で素形材を提供することができます。
    • 厚さ600 mm以上の板はすべて平フライス削りで加工
    • 厚さ600 mm未満の板はどちらの方法でも加工可能
    • 小型ワークは平削りで加工
  • エンジニアリングプラスチックのねじ山は、雄ねじはチェース加工(ねじ山立て)で、雌ねじの場合にはフライス加工で作成するのが理想的です。

    工具

    • チェース工具の使用が推奨される
    • バリ防止のためには2本歯のチェースを使用
    • ダイスの使用は推奨されない後退する時にねじ山がもう一度切られて破損する恐れあり

    良好な加工結果を得るには

    • タップにあそびが必要なことが多い(材料と直径によって異なる。目安:0.1 mm)
    • ねじ山のつぶれを防ぐため、大きすぎない送りを選択する
  • 研削の仕上がりに影響を及ぼす要因

    • 研削盤
    • 使用する工具
    • 潤滑剤
    • 研削加工パラメーター
    • 加工する素材
    • 素形材の真円度/真直度

    加工パラメーターの中でも特に重要なもの

    • 研削速度
    • 送り速度
    • 切込み深さ
    • 横送り量

    最適な加工ができるように機械を設定し、被削材に適切なパラメーターを選択すれば、粗さの少ない仕上がり品質の非常に優れた表面、最大直径公差h9、真円および真直が実現できます。

    エンズィンガーの研削加工

    弊社の加工サービスでは、丸棒を提供することができます。表面品質が高く、寸法公差が小さいことにより、丸棒は加工がしやすく、連続製造工程に適しています。

  • 上質な表面に仕上げるためには、以下の機械加工ガイドラインを必ず守ってください。

    工具

    • プラスチックに適した工具を使用
    • 工具は常に鋭利で滑りが良い状態にしておく(刃先を砥ぐ)切れ刃が鈍いと摩擦熱が高まり、歪みや熱膨張につながる
    • 切れ刃だけがプラスチックと接触するように、工具間に十分な間隔を確保する

    加工機械

    • 低振動の機械を使用しないと、完璧な高品質の表面に仕上げることはできない

    材料

    • アニール処理をした内部応力の低い材料を使用(エンズィンガーの半製品は通常、アニール処理済で内部応力が低い)
    • プラスチックの特性に注意(熱膨張、低強度、低熱伝導性など)
    • 剛性は非常に低いため、加工部品は加工台にしっかりとのせ、できる限り平らに置くことで、たわみや寸法誤差を防止してください

    冷却

    • 発熱量の大きなプロセス(穴あけなど)には切削油を使用する
    • 適切な切削油を使用する

    良好な加工結果を得るには

    • 変形や型にとられる不具合を生じないよう、クランプ力が高くなりすぎないように注意する
    • 機械加工に適したパラメーターを選択する
    • 送りを控えめに維持する
    • 高めの切削速度を選択する
    • 工具の詰まりを防ぐため、切りくずがスムーズに排出できる状態を維持する
    • 反りの発生を防ぐため、必ずどの面も均等に削り取るようにする
  • エンプラの一般的なバリ取り方法

    手作業によるバリ取り

    • 最も一般的なバリ取り方法
    • 臨機応変に対応できるものの、一番手間がかかる
    • 部品の目視検査を同時に行うことができる

    噴射(ブラスト)加工法

    • 研磨剤を高圧で加工品表面に吹き付ける方法一般的な研磨剤として、砂、ガラスビーズ、ソーダ、ドライアイス、ナッツシェルなどを使って表面処理する

    極低温バリ取り

    • -195℃程度の低温で、部品に研磨剤を吹き付けたり、ドラムに研磨剤と部品を入れてバリ取りを行う
    • 一般的に使用される冷却材:液体酸素、液化炭酸ガス、ドライアイス
    • 低温により、素材(ポリマー)が硬化し脆くなる

    火炎によるバリ取り

    • バリを火炎処理する
    • 危険:高温加熱で部品を損傷するリスクがある

    熱風によるバリ取り

    • 熱によってバリを溶かす
    • 非常に安全でコントロールしやすい方法
    • 個々の樹脂素材に適した処理を行うことで、部品の損傷や反りを防止することができる

    赤外線によるバリ取り

    • 熱風によるバリ取りと似ているが、熱風の代わりに赤外線を使って熱する

    振動粉砕/振動バレル研磨

    • 回転/振動機械(トラフ形または円形振動機)に、部品と研磨剤を一緒に入れて処理する方法

最も一般的な欠陥

  • 表面が溶け始めた

    • 切れにくい工具
    • 側部のあそび/クリアランスが少ない
    • 切削油の供給量が不十分

    表面が粗い

    • 送りが大きすぎる
    • 工具の目立て不良
    • 切れ刃の砥ぎ不良

    らせん状のキズ

    • 工具を引き戻す時の摩擦
    • 工具のバリ

    表面の凹凸

    • 先端角が大き過ぎる
    • 工具がスピンドルに対して垂直になっていない
    • ツールがずれている
    • 送りが大きすぎる
    • 工具が中心より上または下に取り付けられている

    終端に「切株」またはバリ

    • 先端角が小さい
    • 切れにくい工具
    • 送りが大きすぎる

    外径のバリ

    • 切れにくい工具
    • 切削直径前のスペース不足
  • 表面が溶け始めた 

    • 工具の切れが悪い、または工具のショルダーの摩擦
    • 側部のあそび/クリアランスが少ない
    • 送りが小さすぎる
    • スピンドル速度が高すぎる

    表面が粗い

    • 送りが大きすぎる
    • 不適切な逃げ角
    • 工具に鋭利な点(軽く丸みが付いた刃先が必要)
    • 工具の心合わせができていない

    カットエッジのバリ 

    • 切削直径前のスペース不足
    • 切れにくい工具
    • 側部のあそび/クリアランスが少ない
    • 工具にリード角が付いていない

    コーナーの亀裂または剥離

    • 不適切な傾斜の付いた工具
    • 工具の切込みが穏やかでない(激しく材料に当たる)
    • 切れにくい工具
    • 工具が中心より下に取り付けられている
    • 工具に鋭利な点(軽く丸みが付いた刃先が必要)

    びびり 

    • 刃先の丸み付けが大きすぎる
    • 工具の取り付け具合が不安定
    • 材料の送り不良
    • 切削幅が大きすぎる(2サイクルで切削するとよい)

    ドリルの刃が短時間で摩耗 

    • 送りが小さすぎる
    • スピンドル速度が低すぎる
    • 冷却による潤滑が不十分
  • テーパー穴

    • ドリルの砥ぎ不良
    • あそび/クリアランスが少ない
    • 送りが大きすぎる

    表面のやけまたは溶解

    • 使用ドリルが不適切
    • ドリルの砥ぎ不良
    • 送りが小さすぎる
    • 切れの悪いドリル
    • ランドが厚すぎる

    表面剥離

    • 送りが大きすぎる
    • あそび/クリアランスが大きすぎる
    • 傾斜が大きすぎる(ランドが薄い)

    びびり、ガタガタ音

    • あそび/クリアランスが大きすぎる
    • 送りが小さすぎる
    • ドリルのオーバーハングが大きすぎる
    • 傾斜が大きすぎる(ランドが薄い)

    内径の送りキズまたはらせん状のキズ

    • 送りが大きすぎる
    • ドリルの心合わせができていない
    • ドリル先端が中心から外れている

    過大寸法のドリル穴

    • ドリル先端が中心から外れている
    • ランドが厚すぎる
    • あそび/クリアランスが少ない
    • 送りが大きすぎる
    • ドリル刃先角が大きすぎる

    過小寸法のドリル穴

    • 切れの悪いドリル
    • あそび/クリアランスが大きすぎる
    • ドリル刃先角が小さすぎる

    偏心穴

    • 送りが大きすぎる
    • スピンドル速度が低すぎる
    • ドリルが次のワークまで貫通する
    • 送り部分に「切りくず」が残り、ドリル刃にずれを生じる
    • ランドが厚すぎる
    • 起動時のドリル速度が高すぎる
    • ドリルが中心にクランプされていない
    • ドリルの目立て不良

    切断中のバリ

    • 切断工具の切れが悪い
    • ドリルがワークを貫通しない

    ドリルの刃が短時間で摩耗

    • 送りが小さすぎる
    • スピンドル速度が低すぎる
    • 冷却による潤滑が不十分

加工工程

  • 炭素繊維およびガラス繊維強化プラスチックを加工する際は、以下の点に注意してください。

    工具

    • 超硬バイト(カーバイドスチール K20)、または理想的には多結晶ダイヤモンド・バイト(PCD)の工具を使用
    • きちんと目立てした工具を使用
    • 素材によって摩耗するため、工具の状態を定期的に点検する

    切削加工用素材のクランプ

    • 押出し方向にクランプ(最大圧縮強度)
    • できる限り弱いクランプ力をかける

    予熱

    • 切削加工用素材を予熱すると、後の加工がしやすくなる

    加工工程

    • 切削加工用素材の端部分を両側からフライカットする
      • 理想的な最大切りくず幅は、フライカット1動作あたり0.5mm
      • 結果として、切削加工用素材内の応力が均一になる
      • 部品の品質が向上する
  • TECAFORM AH / ADナチュラル、TECAPETホワイト、およびTECAPEEKナチュラルいった非強化結晶性の素材は、機械的特性のバランスが良く、寸法安定性が非常に高いのが特徴です。これらの素材は切削加工性に優れ、亀裂型切りくずが出る傾向があります。そのため、大きな切込み量と送り量で切削加工することができます。

    ただし、特にTECAFORMとTECAPET後収縮率は最大2.5%にもなる恐れがあるため加工時の発熱を最小限に抑えることが重要です。局所的な過熱により反りが生じる可能性があります。上記の素材の場合、最適な加工パラメーターで切削すれば、面の粗さを極力抑えることができます。

  • TECASTナチュラル、TECAMID 6ナチュラル、TECAMID 66ナチュラルといったポリアミド製品は、本来非常に硬くて脆い性質があり、このことは「成形直後」の状態にも当てはまります。しかし、その化学構造によりポリアミド製品は吸湿性が高く、こうした性質が靭性と強度の非常に良いバランスを生んでいます。

    吸湿は表面から進行し、小さな素材および部品では実際にほぼ全体が均等に吸湿します。比較的大きな素材では(特に直径100 mm以上の丸棒、厚さ100 mm以上の板)、外側から内側に入るにしたがって吸湿量が少なくなります。

    最悪の場合には、中心部が硬くて脆くなります。押出成形による内部応力に加え、切削加工によって応力亀裂が生じる恐れもあります。

    また、吸湿に伴い材料の寸法が変化することがある点にも注意が必要です。このような吸湿に伴う「膨張」は、ポリアミド製部品の加工および設計時に考慮に入れなければなりません。素材の吸湿(状態)は、切削加工において重要な影響を及ぼします。特に、薄板(厚さ10 mm以内)の部品は、吸湿率が最大3%に及ぶことがあります。大体の目安:

    吸湿率3%で、寸法が約0.5%変化する

    TECAST T ナチュラルの機械加工

    • 亀裂型切りくずになる傾向がある
    • そのため、切削加工がしやすい

    TECAMID 6ナチュラルおよびTECAMID 66ナチュラルの機械加工

    • 連続型切りくずが出る
    • 工具/ワークから切りくずを頻繁に除去する必要がある
    • 切りくずができるだけ短くなるようにし、加工を邪魔しないようにすることが重要:
      • 理想的な加工パラメーター
      • 適切な工具の選択

    弊社では通常、寸法が大きなワーク(直径100 mm以上の丸棒や厚さ80 mm以上の板など)で、中心付近を切削加工する場合には、加工中にクラックが発生するのを防ぐため、ワークを80~120℃に予熱することを推奨しています。

  • TECANAT、TECASON、TECAPEIは非晶性の素材であり、油脂など浸透性の高い溶媒との接触によって、ストレスクラックが発生しやすい傾向があります。また、切削油にも多くの場合、応力発生の原因となり得る媒質が含まれています。そのため、これらの素材を機械加工する際には切削油の使用をできるだけ避けるか、水溶性の媒質を使用してください。

    また、できる限り素材に合った特定の加工パラメーターを使用することが重要です。

    • 送り量を大きくし過ぎない
    • 過度の高圧力を避ける
    • クランプ締力を上げ過ぎない
    • 回転数を高めにする
    • 適切で鋭利な工具を使用する

     

    設計図で先端部を確認する

    • 非晶性素材に合った設計を採用する
    • せん断応力がかからないようにする(設計上および加工中)
    • 素材の種類に合った角度や形状に設計する(できれば、内縁は若干丸みを帯びた形状にする)

    非晶性素材は、高い寸法精度を要する寸法安定性の非常に高い既製部品を製造するために使用されますが、この場合各素材に合った適切な加工パラメーターを使用してください。

  • PTFE含有素材(TECAFLON PTFE、TECAPEEK TF、TECAPEEK PVX、TECATRON PVX、TECAPET TF、TECAFORM AD AF等)は、ナチュラル材と比較すると機械的強度が若干低い場合が多く見られます。

    PTFEを含有していることにより、加工の際にはいくつか注意すべき点があります。

    • 材料はフライス盤を追う傾向にある
      • 表面が荒れやすい(毛羽立ち、粗い表面など)
    • 再フライス加工(リカット)をしない
      • 同様に表面が粗くなる
    • 理想的な表面品質に仕上げるため、毛羽を平滑にする「再切削プロセス」が必要になる場合がある
    • バリ取りが必要になることが多い
  • TECASINT製品には、1000、2000、3000、4000、5000のラインナップがあり、市販の金属加工機でドライ加工またはウェット加工(切削油使用)が可能です。

    工具

    • 超硬バイトを使用
    • アルミ加工用と同等の刃物が最適
    • ガラス繊維またはガラスビーズを充填したTECASINTには、ダイヤモンド・バイトまたはセラミック・バイトを使用

     加工工程

    • 高い切削速度と小さめの送り量でドライ加工すると良好な加工結果が得られる
    • ウェット加工では、切削圧力が高くなり、バリができやすくなるが、工具の寿命を延ばすには効果的
    • 下向き削りで欠損を防止
    • ほとんどの場合、中間アニール処理は不要

    ポリイミドは吸湿性が高いため、バリヤーフィルムで真空パックすることをお勧めします。超高品質部品の吸湿による寸法変化を防ぐため、使用する直前に真空パックを開けるようにしてください。

  • TECATECは、PAEK(ポリアリルエーテルケトン)をベースに炭素繊維織布を50%~60%含有した複合素材です。そのため、TECATECの機械加工は通常の繊維強化プラスチックと比べてかなり難しいものになります。この素材は積層構造になっているため、機械加工が不適切だと以下のようなさまざまな問題が生じます。

    • 刃欠け
    • 層間剥離
    • ほころび
    • 繊維の掘り起こし

    上記の理由から、この素材には特殊な加工方法が必要になります。加工方法は、ワークごとに検討してケースバイケースで決定します。

    切削加工用素材の設計

    TECATECの特定の用途に対する適性と仕上がり部品の品質を左右するのは第一に、素材内におけるワークの位置です。開発段階ですでに繊維織布の方向を考慮しますが、特に使用時にかかる負荷の種類(引張る、押す、曲げる)や、さらに後の切削加工にも考慮が必要です。

    切削工具と工具の材質

    HSS工具または超硬バイトよりも耐久性の高い、以下の工具を推奨します。

    • ダイヤモンド・バイト(多結晶ダイヤモンド)
    • セラミック・バイト
    • チタンコーティング・バイト
    • 機能性コーティング工具(プラズマ技術)

    これらの工具は耐久性に優れているだけでなく、素材に合わせた設計がされていれば送り力を最小化することができます。

    • 普通の鋭さの切れ刃を選択
    • 表面品質(非常に鋭い切れ刃)と工具の耐久性(鈍い切れ刃)のちょうど良いバランスを考える
    • 繊維を断ち切るフライス形状を設計する。設計を間違うと繊維がほつれる恐れがある
    • 炭素繊維は摩耗性が高いため、TECATEC素材を加工する工具は定期的に交換する必要がある
      • 切れの悪い工具の使用による過熱および反りを防止

    切削加工

    • 切削加工中のワークの欠損およびバリ形成のリスクは、繊維織布に垂直に加工するときよりも、平行に加工するときの方が大きい
    • 公差を小さくするため、切削加工中にワークを何度か熱処理することも可能
    • 繊維含有量が高いため、ワーク内に均等に熱が広がることが期待できるそのため、ドライ切削を推奨する

    加工パラメーターと工具パラメーター

    注意すべきパラメーターは以下の通りです。

    • 大きな送り力を避ける
    • 特大の先端角(150~180°)を選択
    • 送りを極小(約0.05 mm/分以下)に設定
    • 高切削速度(約300~400 m/分)を選択

    これらの情報は、TECATECの加工に関する基本的なヒントです。詳細な情報は個々のケースで異なります。

購入後の対応

  • エンズィンガーではお客様からのクレームに対して迅速に対応することを第一としております。不具合が起きた際には調査を行い、必要に応じて素材や製造プロセスを改善します。最終的に正しい結論を導き出すためには、お客様のご協力が必要です。そのため関連するすべての情報をご提供いただくことが重要になります。情報提供や説明が難しい場合は、写真またはサンプルをお送りください。