プラスチックの特性と材料選定

さまざまな産業分野で高機能プラスチックは使用できますが、必要となる機能性、安全性、耐久性を達成するためには、プラスチックの特性をよく理解する必要があります。特に耐熱性、機械特性、耐薬品性などは重要です。最終的に、使用用途(アプリケーション)や使用環境や条件など、多くの点を把握することで最適な素材を選定することができます。


材料選定の具体的な方法

最適な素材を選定するには、たとえば、 

 

  • 使用方法(例:静的か動的か。周速:m/sの回転など。)
  • 使用温度と時間 (例:100℃以上で200時間以上)
  • 部品形状
  • 機械的負荷 (例:50MPaの圧縮負荷)
  • 使用薬品 (例:30%塩酸で10時間)
  • 紫外線への曝露など外的要因の有無
  • その他の使用環境

など、できる限り多くの条件を確認する必要があります。 

 

 

材料選定ツール


プラスチックの物性を詳細に比較できるツールです。使用条件を指定したりスペックを入力することで、スーパーエンプラから汎用プラにおよぶ100種類以上の幅広いグレード郡の中から、最適なプラスチックを検索できます。(特殊な条件での使用、コスト、入手性なども含めたご相談については、直接ご連絡ください。)

 

使用方法
左側のフィルターオプションから項目を選択すると、それにマッチした素材が表示されます。なお、材料選定ツールは参考ガイドであり、お客様の実際の試験を代替したり、仕様を完全に網羅するものではありません。 


エンズィンガーのTECAPEEKの特徴
エンズィンガーのTECAPEEKの特徴

比較ツール

材料選定ツール内の豊富なグレード郡から、選択的に素材を比較することができます。1ページで1度に4つ(最大8つまで)の異なるプラスチックと各物性項目を表示することができます。ツールをアクティブ化するには、「比較」ボタンをクリックしてください。この機能は各素材ページでも使用できます。

テクニカルアドバイス

材料選定ツールとあわせて、エンズィンガーのテクニカルスタッフがサポートします。材料選定以外にも、加工性、法規制、その他の要件についてもご相談いただけます。豊富な経験と幅広い専門知識により、お客様の製品開発の初期段階からお手伝いできます。いつでもアドバイスをご提供できますので、お気軽にお問い合わせください。


【お問い合わせ・ご相談先】


要求される各種特性

プラスチックの物性項目は多いため、材料選定する際にどの項目を確認すべきかわからない場合があります。以下のセクションでは、各物性項目の概要を説明しています。

  • 多くの熱可塑性プラスチックは本質的に電気絶縁性を示します。 しかし、電気特性を要求する用途においては、帯電防止性や導電性が必要となる場合があります。
    導電性・帯電防止性
    → 電気絶縁性

    例えば電子部品を製造する場合、電気回路に損傷を与える可能性のある静電気を回避するために、帯電防止性または導電性の素材が使用されます。また、ATEX指令 (防爆指令:ATmosphere Explosive (爆発性雰囲気))が必要とされる用途にも使用され、着火源となる静電気の放電による爆発の可能性を低減することができます。

    → ATEX

  • 荷重や負荷応力がかかる場合、どの程度のレベル、どのような応力モード(引張や圧縮や衝撃)など、詳細な情報を集めること必要です。また、応力負荷に関する情報を含む部品の情報や図面を得ることができれば、さらに材料選定しやすくなります。
    → 機械特性

  • 耐熱性は材料選定する際の重要なパラメーターです。使用環境の温度と、使用時に素材へ伝達される温度を考慮する必要があります。外部からの熱伝導に加えて、摩擦や蓄熱などの他の要因によって生じる熱も考慮する必要があります。温度変化によりプラスチックは膨張と収縮するので、寸法安定性も密接に関係してきます。

    → 耐熱性・耐寒性
    → 寸法安定性

  • 薬品と接触する場合、温度、時間、濃度などを確認する必要があります。使用時に接触する薬品だけでなく、部品製造や切削加工に使用される潤滑剤や冷却液(クーラント)なども考慮する必要があります。
    → 
    耐薬品性 
  • 摩擦と摩耗が起こる場合、回転や往復運動のような滑らせる用途において、摺動性および耐摩耗性が要求されます。エネルギー効率や静音性、耐久性を考慮する必要もあります。
    → 
    摺動性・耐摩擦性

    → 
  • 産業分野によって、使用できる素材が限定される場合があります。産業分野ごとの特有のレギュレーション(認証規格)、または特定の素材のみに限定するお客様からの仕様スペックなど、様々なケースがあります。エンズィンガーの素材は各産業分野での規格を取得しており、厳しい仕様を要求される場合にも対応できます。

    石油・ガス

    この分野では素材は過酷な環境で使用されます。そのため、EN ISO 23936-1:2009, NORSOK M-710(第3版)に準拠した素材が要求されます。
    → 石油・ガス規格対応

    医療

    • 多くの場合、医療分野では人体への接触が可能な素材が使用されます。
      → 生体適合性プラスチック

    • 繰り返しの使用にあたり滅菌する必要があるため、各種滅菌方法に対する耐性が要求されます。
      → 滅菌・オートクレーブ耐性

    • 外科手術中に画像にて素材を確認する場合があります。造影剤を配合したグレードであれば、X線透視検査やX線照射において部品を確認することができます。
      → X線造影グレード

    食品製造

    • 世界中の国と地域で規格があり、FDA規制(アメリカ)、EU 10/2011やEC 1935/2004 (ヨーロッパ)、食品衛生法(日本)などの規格があります。使用する国の規制に適合した素材が必要になります。 エンズィンガーの素材はこれらの規格に対応し、グローバルに提供可能です。
      食品製造向けプラスチック

    • 食品加工ラインにおいて、破損したプラスチックの混入を防止するため、検出可能な素材の需要が増えています。  金属検出器対応IDグレードを使用することで、食品製造プロセスにおけるプラスチック破損異物を未然に防ぐことが可能となります。
      金属検出機対応プラスチック
      視認性の良い青色プラスチック

    航空宇宙・半導体

    • 高い真空性が要求される航空宇宙や半導体製造装置などでは、低金属イオンの高純度素材が使用されます。
      低アウトガス性

    • 防火のために使用される用途、例えば航空宇宙においては難燃性の素材が要求されます。
      難燃性プラスチック 
  • 屋外、発電所などで高エネルギーの放射線に曝される場合、UV耐性や耐放射線性が必要です。材料選定の際は、暴露放射量と使用環境を確認する必要があります。
    → 耐放射線性
    → UV耐性

  • マシニングは切削加工用プラスチックを加工する際に最も用いられる方法ですが、接着や溶着もあわせて使用される場合があります。熱可塑性プラスチックは金属やプラスチックとの接着や各種溶着に対応しています。
    → 接着性

    溶着性